院長コラムCOLUMN
糖尿病のお話② 〜血糖値とインスリンのお話〜
2023.12.01
糖尿病とは「血糖値が高い」状態です。
「血糖値が高い」とは文字通り血管の中に糖分がたくさんある状態です。
「血糖値が下がる」というのは血管から糖が減ることを意味します。
糖は本来エネルギーの素ですから、糖は血管から各臓器の細胞に取り込まれてエネルギーとして利用されます。この血管から細胞に移動するプロセスで働くのが膵臓から分泌されたインスリンです。
血糖値が高い人は、このインスリンが働けないために糖が行き場を失って血管の中に溜まっている状態になっています。
インスリンは「注射するもの」というイメージが強い方もおられると思いますが、本来体の中にあって糖の流れの中心的な役割を果たしている重要なホルモンなのです。
インスリンを分泌する膵臓のβ(ベータ)細胞は、膵臓の中のごくごく一部の領域にしかありません。β細胞は胎児期から新生児期にかけてたくさん作られますがそれ以降は増殖が緩やかになります。思春期にもβ細胞が増えますが成人以降は増殖しにくくなります。
肥満などでインスリンが効きにくくなると、それをカバーするために一時的に増えますが、やがて細胞量は加齢とともに減少し始めます。
β細胞は早い人は20代、30代からでも減少が始まり、糖尿病を発症した時点ではβ細胞量は半分くらいになっているといわれています。糖尿病の治療はこの残されたβ細胞を如何に温存し、有効に働かせるか、そしてβ細胞が高度に足りなくなった人に、如何に早期にインスリン注射を始めるかといったところに焦点が置かれます。バランスの取れた食事と適度な運動はβ細胞の保護に重要です。
ですので、糖尿病といわれていない人であっても、β細胞を温存できるように気をつけなければいけません。それは若いうちからお肌の日焼け対策や保湿ケアを怠らないようにして、お肌のアンチエイジングに気を配ることと似ているかもしれません。肥満・喫煙・多量の飲酒などはβ細胞を障害します。また高血糖そのものがβ細胞を傷つけるので、例えば食後の血糖値スパイクなどのわずかな高血糖もできれば避けたいですね。野菜から食べる、雑穀米(私は食物繊維の豊富な“もち麦”を食べています)を食べる、よく噛んでゆっくり食べる、食後30分くらいで体を動かして筋肉に糖を消費させると言ったことも有効です。昼夜のリズム(概日リズム)が破綻することもβ細胞に負担をかけるので、夜遅くまでPCやスマホの光に晒されることを避けると言ったことも大切かもしれません。
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